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１２月１５日のひすい会の忘年会の時、網代から修善寺へ行く途中の坂道で人力車の工場があるのが目に入りました。
その時は、「何でこんな所にこんな工場があるの？」と、いう印象でした。
それから一ヶ月半後の２月１日の新聞にこの工場の記事を見てびっくり。
参考までに紹介します。
乗ってラク 引いてラク 人力車作り（静岡県）
歩こう 多くの文人に愛された伊東市は、多才な文学者、木下杢太郎の生
家を利用した市立記念館を中心に、幸田露伴、北原白秋ら30をこえる文学碑
が点在している。駅前から河野さんの人力車が６コースで運行されており、
中心部を流れる松川の遊歩道沿いを揺られながら、車夫の解説で文学・町並
みめぐりも出来る。
「人力車で来るのかな．．．．」 最寄り駅まで迎えます、と河野茂さん（77）から連絡があったとき、山口カメラマンと私は、同じようなことを考えていた。
河野さんの人力車工場が、静岡県伊東市宇佐美温泉天気山と、ほかほかとあったかそうな住所だったので、温泉と人力車をつい、結びつけてしまった。
工場は、しかし、峠へ抜ける坂道で、人力車どころではない。２人の甘い連想はすぐにしぼんだ。遅いこと」がぜいたくな時代という。
観光用の人力車が復活している。「自動車の目線と違う景色がある」「偉くなつた気分で楽
しい」といたく好評である。
「全国で470台。このうち9割をうちで作った。引きやすくて頑丈だ」。地下足袋、防護眼鏡の河野さんは自慢そうに言った。
「部品は573個。車輪とめっき以外はここで作る。建具屋、ほろ屋、板金屋と、23の職業をこなす一貫生産というやつだ」
「乗って楽、引いて楽」な人力車の命は、バネと木のしなりという。バネは上下動の大きさに応じ振幅の変わる二重バネを発明、車夫の引き棒は関東以北の樫にこだわる。暖かい地方の樫はどうし
ても、しなりが弱い。
埼玉県菖蒲町で生まれ、14歳で刀かじに奉公に出た。これまで折れたことがないというバネ作りは、この経験が生きる。精米所、製めん工場、タクシー会社と何にでも手を出した父親の影響か、戦後、隣接する桶川市で、自動車の修理工場を手始めに、農機具、ダンプカー、テレビのチューナー作り、結婚式場、焼き鳥屋、手っ取り早く利益が上がるというすし屋と、手広くやった。結論は「この世に堅い商売、ありませんわ」。
人力車作りを始めたのは71年、生活用具の博物館を作ろうと思い立ち、骨董品をあさった。明治３０年製のおんばろ人力車が手に入った。修理して経営する結婚式場に飾ると、群馬県太田市の神社から結婚式の小道具用の注文が来た。
町おこしの観光地からも連絡が相次いだ。しんちゆうやステンレスをふんだんに使ってさびない「河野製」は評判になり、88年に伊東に工場を作った。
睡眠時間３時間、特許数23のアイデア人間は、17度の坂道を上れる電動式を開発、角館（秋田）や小田原（神奈川）、京都など坂の多い全国5カ所の観光地で活躍している。
女性を含め、人力車を引きたいという声が増え続ける。１台165万円では手が出ない若者たちのために最近、レンタルも始めた。
小学校4年の担任が例の「虎は死して皮を留め」の格言で、「君たちはきっと名を残しなさい」と言った。それが忘れられない。
「名を残すって、いい商品を作り続けることなんだ」
そうして、引き棒の先喘、座席の背もたれに「武蔵乃園 金国」と刀かじ時代の銘が堂々と入る。
これもまた、「名を残す」ことなのだろうか。つい、聞きそびれてしまった。